え、私謝ってもらったっけ。どんちゃん騒ぎになって、お店の人に謝って、なんとか事なきを得て、それからえっと、えっと…ん?
ほんとかよ、と口に出しそうになったけどもうめんどくさいからやめておく。
「どーすか、はじめての寄り道は」
「た、たのしい」
「ふーん」
「なにその適当な相槌」
「や、たのしいなら良かったー、と思って」
「先輩は?」
「俺も楽しいよ」
私と並ぶようにボックスに背をつけて、制服のスラックスに両手を突っ込む。そんな風に体勢を変えただけで数秒もすれば通りかかった他の学校の女子が先輩を見て「ふわぁ」、なんて頰を赤らめるから、それに対して先輩も律儀に微笑み返していた。
いやスマイル0円野郎かお前は。心のソーシャルディスタンス0か。0なんだな!
もう知らない、とそっぽを向くのに、程なくして隣から長いため息が聞こえてきた。
「…けど俺はオズちゃんと二人で来たかったかな」
「…え」
「…」
「ま、またそうやって…ひとのことからかうのも大概にしてくださいよ」
やだな、これだからプレイボーイは、って皮肉っぽく笑って見せたのに、反応がなくて見上げたら隣から真剣な目に射抜かれた。それから一度視線を伏せて、「あのさ、」って低い声がする。
「うわあ!?」
だから彼が振り向く前にUFOキャッチャーにがっついた。
「…………おいオズちゃん今いいとこだったでしょうが」
「こ、これすごく可愛い…!」
「聞いてる人の話?」
聞いてないし聞こえない。振り向いたガラスケースの中には猫のぬいぐるみ…抱き枕だろうか、それがたくさん積み重ねられていて。中でも1番奥にそびえる特大の黒猫さんが、めっっっちゃくちゃに愛くるしい。
ふおお、と目を輝かせる私に、先輩も隣、上の方から覗き込む。
「黒猫? 猫好きなの」
「猫が好きです。でも黒猫のほうがもっと好きです」
「なにそのどっかで聞いたフレーズは」
可愛い、可愛い、可愛いすぎる。あれを抱いて眠れたら天にも昇る気持ちだな。羨望の眼差しを通り越して目に光を灯して離さない私に、先輩は私とUFOキャッチャーを交互に見てからやっぱり最後に私を見る。
「取ってやろうか?」
「えっ」
一瞬、思いっきり期待の眼差しで先輩に振り向いて、目があってからはっとする。…でもダメだ、今更かもしれないがこのひとにこれ以上、無駄な借りを作るような真似は出来ない。
「…い、いいです」
「なんで」
「だってどうせ取れなさそう」
「可愛くねえっ!」
「二人とも~! こっちこっち!」



