いつもと同じ朝。

歯磨きをした途端に、美咲は 吐き気に襲われる。

何も食べていない胃から 苦い胃液が込み上げて、美咲は そのまま洗面台に 吐いてしまう。


『何、これ。私、どこか具合が悪いのかな。』

洗面台に両手を付いて、美咲は 大きく喘いでいた。
 
「どうしたの、美咲。苦しいの?」

後から起きてきた佳宏は、驚いて 美咲の背中を 擦ってくれる。
 

「ごめんね。もう大丈夫。」

美咲は、呼吸を整えて 佳宏を見る。
 
「美咲、真っ青だよ。ちょっと座って。」

佳宏は、美咲の肩を抱いて ダイニングの椅子に 座らせてくれた。
 

「夏バテかな。貧血かもしれない。」

軽い眩暈もしていて、美咲は テーブルに 顔を伏せて言う。
 
「今日は休んで、病院に行こう。」

美咲の隣に 腰掛けた佳宏は、美咲の背中を撫でながら 心配そうに言う。
 
「寝ていれば治るから。佳宏は仕事に行って。」

少し 胸のムカムカが治まった美咲は、顔を上げて 笑顔を見せる。