お兄ちゃんの友達と、秘密のキス。

やだ、なんか怖い。どうしよう。


でも、どうしてなのか、うまく言葉が出てこない。


「あ、あの……っ」


いつのまにか、足が震えて身動きができなくて。


そんな時、足元でパシャッと音がしたのと同時に、足が何かで少し濡れる感覚がした。


「おっと」


その声に隣を振り向くと、すぐそばに花瓶を手に持ったさっきの超イケメンな店員さんが立っていて。


よく見ると、私の足元に少し水がこぼれてしまっている。


あれ? いつの間に……。


でもちょっと、助かったかも。


「お客様、大変失礼いたしました。大丈夫ですか?」


「は、はいっ。大丈夫です」


私が返事をすると、サッとその場にしゃがみ、ポケットから出したふきんで私のローファーと床をささっと拭く彼。


そして私のことを見上げたかと思うと。


「申し訳ございませんでした。お客様の足に水が少しかかってしまったみたいなので、すぐそこの事務所でタオルをお貸しいたしますね。来ていただいてもよろしいですか」


正直ほとんど濡れていなかったので、わざわざタオルなんていらないと思ったけれど、そのまっすぐな視線から目をそらすことができなくて。


「え、あ……はい」


私は吸い込まれるように頷いてしまった。


「では、こちらへ」