「聞いたか?? 今年、全国大会に出場した選手が入学したって聞いてたんだが入部しなかったらしいぞ!!」

「え、まじかよ。結構期待してたのに·····。」

俺は先輩たちがそんなことを話しているのを聞いた。
まさかと思った。
そんなことは無いと思ったが、
名前を聞いてみた。

「あの、先輩。その人の名前って··········。」

「あぁ。 間宮 彩葉ってやつらしいぞ!」

俺は疑った。彩葉がここに··········。
この学校にいるのか··········。
やっぱりあいつが、陸上部に見学にきたあいつが彩葉だったんだ。

でもなんで··········。あのころのあいつは、
誰よりも陸上が大好きで
誰よりも努力していた。
そんな人がなぜ陸上を目の前にしてあんな顔をしたんだ·····。

約束··········。もう忘れたのか·····?


「おい、蓮。 まさか、間宮さんのこと知ってんのか〜? つれてこいよ〜。」

「無理です。来ないってことはする気が無いんでしょう。」

そう、来ないのは理由があるからだ。
きっと俺が転校してから彩葉には何かがあったんだ。
転校するって決まったのも突然だった。

彩葉が泣いてても俺にはなんて言葉をかけていいかわからなかった。
俺も離れたくなかった。
だからそれからも俺は··········。
約束を守り続けて全国でまた会いたかったんだ。
なにか理由があるなら俺が··········。
今度は助けたい。


それから俺はいつも以上に陸上の練習に励んだ。


「やっぱり気になる··········。」

なんで彩葉は俺に話しかけてくれなかったんだ··········。
覚えてる??彩葉だよ!!
くらいいってくれてもいいだろ·····。

忘れてるのか·····?

いや、そんな事ないって信じてる。
なにか引け目を感じてるんだったらそんな事ないって言ってあげたい。
どうやっていえばいいんだよ!!
なんも事情なんてわかんないのにいったら
傷を深めるだけかも知らないじゃねえか!

あれ、図書室に人?こんな時間に·····。
あれは··········。彩葉··········!?
すごく熱心だ。
周りが見えなくなるほど1つの事に夢中になれる集中力。
いつも笑顔で落ち込んでいる時も笑わせてくれる優しさ。
あいつのそんなところが大好きだった。
あれこそ俺が知ってる彩葉だ。

でも俺は見てしまった。

な、んで··········。

そんな彼女の切ない姿で泣いているところを。