Your Princess

きらきらとした、湖の水面がまぶしい。
私は覚悟を決める。
「私は、確かに蘭のことを嫌いだって言いました。でも、嫌いじゃないんだと思う…」
蘭の顔がみるみると曇っていく。
絶対に怒るだろうと思う。
「私は、人を好きになったことがないんです。だから、恋愛感情っていうのが未だにわからない」
自分の手で顔の痣に触れた。
「私はこの顔でいる限り、誰にも愛されないって思ってました。だから、誰かに好きだって言われても…わかんないんです」
蘭の目は怒っていた。
そりゃ、そうだよね。
自分でも、なんだそりゃって思う。

昔、蘭に気持ち悪いと言われたと思い込み。
それ以来、ずーと蘭のこと嫌いになって。
それが最近になって。気持ち悪いと言ったのは蘭じゃなくて、ローズさんでした。
わー、私。バッカだぁ。
じゃあ、蘭のこと信用して好きになろう。

…だなんて、思えるわけないのだ。

「おまえの呪いは、その痣なんだな」
そう言って。蘭は手をのばして。
私の顔に触れようとした。
私は「おうっ」と変な声を出して。
飛び跳ねて蘭から離れた。

「おまえに隠していたことがある」
蘭は手を引っ込めた。
「俺は、女の身体に一切触れることが出来ない」

私は痣を手で覆ったまま。
ぼんやりと蘭を見た。
知ってるよー。
と、心の中で呟く。
「何だ、おまえ。知ってたのか?」
不機嫌なまま、蘭が言った。
「え…いえ。この前、私の痣に触れた時…そうなのかなー…とか思って」
まさか、シュロさんから聞いたとは言えるわけもなく。
アハハと私が笑うと。
蘭はじぃーとこっちを見る。
バレたのではないかと、冷や汗が出てくる。
「おまえは、アズマと同じでカンがいいのだな」
あっさりと蘭が納得したので。
「えっ」と声が漏れた。

「もう一つ、おまえに隠していたことがある」