Your Princess

外に出ると。
さっきまで視界の悪かった霧が消えている。
サクラさんはスタスタと歩いて。
庭のほうへ進んでいく。
すると、ワンワンッと犬の鳴き声がして。
どこからともなく、金色の犬が飛び出してきた。
「おー、ビビ。あいつらはどこにいるの?」
ビビと呼ばれた犬はワン! と吠えると。
すぐにどこかへ走っていく。

「あれー。サクラさん。珍しいね。庭に顔出すなんて」
そう言って。
突如として、現れたのは男の子だ。
11~12歳くらいの可愛らしい男の子だった。
ぱっと見た感じは蘭に似ていた。
褐色の肌と真っ黒な髪の毛。
違うのは瞳の色が真っ黒だということだ。
「カレン。こいつは、渚。ここで庭師をしているのよ」
「初めまして。渚…くん」
私は渚くんに頭を下げた。
渚くんは、じぃーと私の顔を見る。
ああ、またかとばかりに私は反射的に口元をおさえてしまう。
「渚。彼女は蘭のお嫁さんでカレンっていうのよ」
サクラさんが説明するも渚くんは黙って私を見つめている。
何で、顔を隠しているの? って言わなくても渚くんの顔に出ている。
「おーい。渚! 何、サボってんだよ」
そう言って犬と一緒にやってきたのは。
さっきの運転手だった男性だ。

「あ、クリス! こっち来てよ」
サクラさんがブンブンと右手を振る。
優しそうな笑顔でやってきた運転手さん。
改めて見ると、やっぱり美少年だなと思ってしまう。
整った顔立ち。
茶色い髪、茶色い瞳。
顔は小さくて背は私よりも高い。
年は同じくらいかな?

「カレン。こちらは、クリス。普段は庭師なんだけど、たまに運転手の仕事をしているの」
「さっきはどうも。クリスです」
ニカッとクリスさんが笑うと。
白い歯がこぼれ見える。
急に心臓がバクバクするのを感じた。

呆然とクリスさんを見ていると。
急にサクラさんが腕を引っ張って耳元でささやく。
「クリスは私のもんだから、好きにならないでね」
「え!?」
思わずサクラさんを凝視すると、サクラさんはニッコリと微笑んだ。

「カレン様…カレンさん…。カレンちゃんのほうが良いかな? よろしくね」
そう言ってクリスさんが手を差し出したので、反射的に私は握手をする。

「以上がこの屋敷に住んでいる主要なメンバーかしらね。カレン。これからよろしくね」