さらりと言いのけたクリスさんの言葉に、私は「魔女!?」と大声を出してしまった。
「証拠はないんだけど、この国では有名な話。だから、ライト先生の言うことは信憑性があるっていうか…。まあ、ライト先生自身。名医だし治せない病気なんてないっていう噂だし。だから、蘭の主治医になっているわけで…」
ベラベラと話し出すクリスさんに、ぽかんとして見つめていると。
それに気づいたクリスさんが「あ、ごめん」と謝った。
吸い込まれるような大きな目で、じっとこっちを見てくる。
「とにかく、サクラはライト先生の言うことを受け入れて、カレンちゃんの誘拐に手を貸してしまったんだろうね」
空っぽのティーカップを持ち上げたかと思うと。
クリスさんは黙って、カップを置いた。
おかわりが欲しいのかなと思うけど。このタイミングでシュロさんを呼ぶのも、何だかいけない気がする。
「ま、ライト先生の唯一の誤算は、やっぱりローズでしょ」
「…そんなに凄い人なんですか、ローズさんって」
蘭にしても、渚くんにしても。
ローズさんの話題になると、脅えるというか…。
「だって、あいつ世界最強説まであるんだよ…。って、ごめん。喋りすぎたね」
さっきから、クリスさんは謝ってばかりだ。
クリスさんが下を向いた際、サラサラとした髪の毛が動く。
「ともかく。サクラはローズの存在を知っていたわけだから。カレンちゃんが酷い目に遭うことはないって考えていたと思う。あいつなりに、考えて行動してはいたんだと思うよ」
ローズさんがいかに最強かということはわかったけど。
クリスさんはそれ以上、ローズさんのことを喋ることはなかった。
再び、クリスさんはティーカップを持ち上げる。
「どっかの料理人とは違って、サクラは賢いからな。なっ! シュロ」
急にクリスさんが大声を出して、厨房のほうを見る。
私も厨房のほうに目をやると。
カウンター越しに、大きな目を見開いて、こっちの様子を窺がっているシュロさんの姿があった。
「シュロ、何してんだよ。おかわりの紅茶持ってきて」
クリスさんが叫ぶと「今行くわー」と言って。
シュロさんがすぐにティーポットを持ってきて。
カップに紅茶を注いだ。
「さっきから、ずっと俺達のこと見てたよなぁ」
呆れるように、クリスさんがシュロさんに言った。
「そりゃ、そうだろ。クリスが蘭の奥さんと二人きりでコソコソと喋ってたら、俺が蘭の代わりに見張るしかないだろ」
当たり前だ…と言わんばかりにシュロさんが言ったので。
私とクリスさんは目を合わせて、笑ってしまった。
「シュロくんは、本当に面白い男だね~」
クリスさんの笑う姿を見て、シュロさんはむっとした表情をする。
「何で、笑うかな…。それより、クリス。サクラはどうしたんだよ」
「……」
シュロさんの一言で瞬時に私の顔はひきつった。
だけど、クリスさんは笑ったまま、
「サクラは当分、出かけてるからいないよ」
とさらりと言ってのけた。
クリスさんは強いんだな…と思ってしまう。
同時に、やさしい人だ。
サクラさんのことを、ちゃんと思いやってる。
「証拠はないんだけど、この国では有名な話。だから、ライト先生の言うことは信憑性があるっていうか…。まあ、ライト先生自身。名医だし治せない病気なんてないっていう噂だし。だから、蘭の主治医になっているわけで…」
ベラベラと話し出すクリスさんに、ぽかんとして見つめていると。
それに気づいたクリスさんが「あ、ごめん」と謝った。
吸い込まれるような大きな目で、じっとこっちを見てくる。
「とにかく、サクラはライト先生の言うことを受け入れて、カレンちゃんの誘拐に手を貸してしまったんだろうね」
空っぽのティーカップを持ち上げたかと思うと。
クリスさんは黙って、カップを置いた。
おかわりが欲しいのかなと思うけど。このタイミングでシュロさんを呼ぶのも、何だかいけない気がする。
「ま、ライト先生の唯一の誤算は、やっぱりローズでしょ」
「…そんなに凄い人なんですか、ローズさんって」
蘭にしても、渚くんにしても。
ローズさんの話題になると、脅えるというか…。
「だって、あいつ世界最強説まであるんだよ…。って、ごめん。喋りすぎたね」
さっきから、クリスさんは謝ってばかりだ。
クリスさんが下を向いた際、サラサラとした髪の毛が動く。
「ともかく。サクラはローズの存在を知っていたわけだから。カレンちゃんが酷い目に遭うことはないって考えていたと思う。あいつなりに、考えて行動してはいたんだと思うよ」
ローズさんがいかに最強かということはわかったけど。
クリスさんはそれ以上、ローズさんのことを喋ることはなかった。
再び、クリスさんはティーカップを持ち上げる。
「どっかの料理人とは違って、サクラは賢いからな。なっ! シュロ」
急にクリスさんが大声を出して、厨房のほうを見る。
私も厨房のほうに目をやると。
カウンター越しに、大きな目を見開いて、こっちの様子を窺がっているシュロさんの姿があった。
「シュロ、何してんだよ。おかわりの紅茶持ってきて」
クリスさんが叫ぶと「今行くわー」と言って。
シュロさんがすぐにティーポットを持ってきて。
カップに紅茶を注いだ。
「さっきから、ずっと俺達のこと見てたよなぁ」
呆れるように、クリスさんがシュロさんに言った。
「そりゃ、そうだろ。クリスが蘭の奥さんと二人きりでコソコソと喋ってたら、俺が蘭の代わりに見張るしかないだろ」
当たり前だ…と言わんばかりにシュロさんが言ったので。
私とクリスさんは目を合わせて、笑ってしまった。
「シュロくんは、本当に面白い男だね~」
クリスさんの笑う姿を見て、シュロさんはむっとした表情をする。
「何で、笑うかな…。それより、クリス。サクラはどうしたんだよ」
「……」
シュロさんの一言で瞬時に私の顔はひきつった。
だけど、クリスさんは笑ったまま、
「サクラは当分、出かけてるからいないよ」
とさらりと言ってのけた。
クリスさんは強いんだな…と思ってしまう。
同時に、やさしい人だ。
サクラさんのことを、ちゃんと思いやってる。



