Your Princess

クリスさんに頭を上げるように言って。
シュロさんに2人分の紅茶を用意してもらった。

シュロさんが紅茶を運んできてくれて。
私は一口、紅茶を飲む。
クリスさんは黙ってティーカップを眺めている。
「ちゃんと、謝りたかったんだ」
クリスさんが言った。
「サクラがカレンちゃんを誘拐したのは、俺のせいなんだ」
「へ?」
まっすぐな目でクリスさんが言った。
クリスさんと面と向かって喋るのはいつ以来だろう。
少し見ない間に、クリスさんの色気というかカッコ良さに磨きがかかっている気がする。
「あいつ、いなくなる前に言ってたんだ。『クリスの呪いを解く方法が見つかった。もうすぐ呪いが解けるから』って。…ライト先生に騙されていただけなんだ」
「呪い…」
まるで、非現実的な言葉は。
自分にとってどこか遠くあり、でも近くにある存在だったんだと思い出した。
此処にいる皆は呪いをかけられているんだ…

「カレンちゃんには、ちゃんと話すよ。俺とサクラの呪い」
「…いいんですか? 聴いてしまって」
遠慮がちに言うと、クリスさんは白い歯を見せてニッコリと笑った。
「カレンちゃんには聴いてほしい」
急に心臓がバクバクとする。
ふぅ…と深呼吸すると。
クリスさんは私を見てまた笑った。
「俺とサクラはね、幼なじみなんだ」
「幼なじみですか?」
そう言えば、シュロさんがいつだったか「腐れ縁」と言っていたのを思い出す。
「これでも、俺とサクラは貴族の出なんだよ」
「貴族!!!」
「と言っても、男爵だけど。カレンちゃんの家より身分は低いよ」
クリスさんはそう言うが。
うちは没落貴族だから、クリスさんたちのほうが随分と身分が高いのでは…と考える。
「俺はね、生まれたときは性別が女だった」
「・・・え?」