Your Princess

どれだけ、時間が経ったのかわからない。
この部屋には窓がないので。
朝か夜なのかもわからない。
色んなことを考えているうちに。
涙が溢れてきた。
馬鹿な自分が嫌になる。

平和だった…。
自分の顔の痣がある限り、幸せなんかじゃないって思っていたけど。
それでも、私。幸せだったんだなって。
気づくの遅すぎ。

「蘭、助けて。蘭…」
無意識に、蘭に助けを求めている。
お兄様じゃなくて。
蘭と叫んでいる自分に何でだろうと思いながらも。
頼っていたんだ…と今更気づいた。

ギチギチと力を込めて手首を引っ張ったけど。
ロープが食い込んで更に痛くなるだけ。

そのうち。
異変に気づいたのは、ドアから微かに煙が入ってきていることだった。
「火事…?」
ライト先生の言葉を思い出す。
蘭が来なかったら…。
蘭が来なかったら…?

そもそも、蘭が来る保障なんてどこにもなかった。
でも、来てくれるだろうっていう自信はどこかにあった。
「蘭、らーん」
精一杯叫ぶと。
ドアが勢いよく開いた。
同時に。
物凄い煙が一気に部屋を包み込んで。
目の前が見えなくなった。

煙のせいで呼吸が苦しくなり。
咳き込んでいるうちに、意識が遠のいていく。

「ったく。第二王子に身代金用意される奴がどこにいるんだ」

上から降る言葉を聴きながら。
完全に意識を失った。