Your Princess

しばらくたっても、現状は変わらない。
何も置いていない部屋。
冷たい空気が漂う部屋。
目の前にはドアが一つ。

サクラさんは先生に頼まれて私をここに連れてきたってこと?
君を売った…
言葉の意味が未だ理解出来ない。
とにかく、サクラさんと先生が組んでいることは確か。
でも何で今日?
機会はいつだってあったはずだ。
「あ…」
そういえば、蘭とサクラさんが「大事な日」と言っていたのを思い出す。
守備も手薄だと…
それが関連しているのだろうか。

ライト先生、お金持ちじゃないのかな…
家庭教師にお医者さん。
蘭の主治医だって言ってるし。それなりにお金もらってるんじゃないの?
何故、私を人質にしたのか。
色んなことを考えても。
わからない。

「あー…」
私はやっぱり、無知なんだろうな。
馬鹿で世間知らずで。
わかんないことが多すぎる。

仕方ないってわかってたけど。
でも、自分で自由を得ようともしなかった。
蘭に「好きにしろ」と言われて。
変わるのが怖かった。
守られた世界で生きていくのが当たり前で。
外に出ることが怖かった。

傷つくのが怖い。
誰かと知り合えば、自分の顔を指さされる。
でも、自分を知っている人だけの空間であれば、これ以上傷つかない。

両親だって、お兄様だって。
私を守ってくれていた。
そして…蘭だって。
「助けてよ…」
乾いた唇から出た言葉。
虚しく響くだけ。

「助けてよ、蘭」