Your Princess

しばらく、木箱の中で過ごしていると思えば。
台車が止まって「出てきていいわよ」というサクラさんの声がした。
木箱の蓋を開けてもらって。
箱から出て「えっ」と声をあげてしまう。
周りは木々で生い茂っている。
目の前にあるのは、自動車一台。トラックではない。
「カレンは助手席に座って」
そう言うと、サクラさんは運転席に座った。
「あの…フツーに座って大丈夫ですか?」
「フツーって何よ。とにかく助手席に座って」
サクラさんが急いでいるようだったので、急いで助手席に座る。
「シートベルトして。あ、そこよ」
言われるがまま、シートベルトをして。
車は発進した。

「別に隠れたり、変装する必要はないわ。今日は守備が手薄だから。大丈夫」
「へ?」
慣れた手つきで運転するサクラさんを見て。
運転できるんだ…と感心してしまう。
屋敷から離れると、景色は一変して畑一色になった。
「そうそう。お腹すいているでしょ」
道路で急停止したかと思えば。
サクラさんは後部席から、バスケットを持ってきて。
「パンと飲み物があるから食べて」
笑顔で言った。
バスケットを覗くと、サンドイッチと飲み物が入っている。
確かに、朝食はあまり食べていないし。
やたらと緊張としたせいか、喉がひどく乾いていた。
瓶に入ったオレンジジュースの蓋を開けて、ゴクゴクと飲み干す。
「おいしい…」
「そりゃ、良かった」
横目でこっちを見ながらサクラさんが言った。

ジュースを飲み終えると。
不思議と落ち着いた気持ちになった。
同時に、まぶたがやけに重たく感じる。
「到着するまで、寝てていいわよ。着いたら、起こすわ」
まるで、天井から声がするかのように。
半分が夢心地でサクラさんの声を聞き取った。
すぐに私は深い眠りについてしまったのだった。