暖かな空気から少しずつ冷たい風が吹いていく。
渚くんは首を傾げたかと思えば、
「サクラさんは俺の命の恩人だよ」
と、はっきりと答えた。
「俺、めたんこ泣き虫で。色々あって毎日泣いていたけど。救ってくれたのがサクラさんだった」
「……」
「クリスもサクラさんも、俺を本当の弟のように可愛がってくれてるんだ。だから、2人にはいっつも感謝してるよ」
「そうなんだ…」
渚くんの笑顔を取り戻したのは、サクラさんだったのか。
「さっ、そろそろ戻ろうか」
渚くんが立ち上がる。

「カレン。俺、カレンのこと好きだよ」
「へ?」
いきなりの「好き」という言葉に、私は固まる。
「あ、言っとくけど、恋愛感情じゃないからね。俺、好きな人いるから」
「うん。わかってる」
社交辞令だってことくらい・・・
私も立ち上がると。
渚くんはこっちを見た。
「カレンがこの先、どの道を選ぶかはわからないけど。ここにいる人間は皆、カレンのことを嫌いになったりしないから」
「…ありがとう」
絶対に、社交辞令だとしても。
渚くんの言葉が嬉しかった。

渚くんには不思議な力があるのだと思う。
一緒にいると癒される。
喋って心が楽になった。

私は部屋へと戻る。
そして、サクラさんの味方になろうと決心した。