しばらくして、呼吸が楽になり。
「俺、食堂戻るので」
と言って。シュロさんは戻って行った。
私は、ひとまず屋敷に戻ることにした。

部屋へ向かうと。
隣の部屋の扉が開いていて。
男性姿のサクラさんがドアの前に立っていた。
「あら、カレン。戻ったの?」
何事もなかったかのように。
にっこりと微笑むサクラさんが怖い。
普段は背丈が同じなのに、男性モードになると少しだけ背の高くなるサクラさんを見上げる。
「今、ライト先生が蘭の診察してくれてるの」
そう言って視線のほうに目を向けると。
ベッドの前で白衣を着たライト先生が診察をしている。
「ライト先生、まるでお医者さんみたい」
ぽつりと言うと。サクラは「えっ」と声をもらした。
「お医者さんみたい…じゃなくて、ライト先生は立派なお医者さんよ」
「え…」
男性の姿だけど女性口調で喋るサクラさんに違和感を覚えながら。
再度、ライト先生の背中を見た。
「ライト先生は、蘭の主治医なのよ」
「…医者?」
初めて聞いた真実。
そうか…先生とお兄様の繋がりが見えてしまった。

しばらくすると、ライト先生が部屋から出てきた。
「例の症状が出たみたいだね。それと重なって随分と疲労しているみたいだし、寝不足もあったんじゃないかな」
ライト先生はサクラさんに説明をしている。
「ゆっくりと眠って、栄養のあるものを食べれば治るさ」
「先生ありがとうございます」
ライト先生とサクラさんの会話を黙って見ていると。
くるりとライト先生がこっちを向いた。
「カレンさん。残念だけど授業はまた明日だね」
「あっ!」
ライト先生に言われて。
今日は授業のある日だということを、すっかりと忘れていた。
「先生、申し訳ありません」
頭を下げる。
「大丈夫さ」
先生は私の肩にぽんっと手を置いて「じゃあ、明日」と言って去っていく。

「カレン。とりあえず、着替えましょうか。お風呂に入ったほうがいいかも」
足元に泥がついているのを見たサクラさんが言った。
「蘭は綺麗好きだからね。綺麗になったら、蘭の側にいてやって」
「はい…」