一人じゃない。
男の子は…黒髪の女の子と一緒だった。
「女の子に向かって平然と気持ち悪いと言って。尚且つ、碧い瞳の男といえば。俺はローズしか浮かばないけどねえ」
「ローズ…ローズって」
サングラスの人!!!

口元をおさえる。
頭がグラグラと揺れる。
あの男の子は蘭じゃなくて、ローズさん…。
そんなことってあるの?
「はあ…はあ…」
急に息をするのが苦しくなって。
その場にしゃがみ込む。
「大丈夫っすか?」
汚れるのなんか気にせず、シュロさんは膝をついて私を支えた。
うまく呼吸が出来ない。
「ゆっくり息を吸ってください」
背中をさするシュロさんの手が温かい。
もう苦しいのか、辛いのか何の涙だかわからない。

「もう一つ。俺は掟を破ってでも、カレンさんに伝えます」
「……」
グラグラとする視界の中。
シュロさんが言う。
「ここに住む人達は皆、魔法にかかってるんです。俺は、記憶が一日しか持たない。渚は成長が止まってしまった。サクラは性別が変わって。クリスも夜だけ性別が女になる」
「……」
「じゃあ、蘭の魔法は何かって言ったら」
ゆっくりとシュロさんを見る。
「蘭は、女の人の身体に指一本すら触れられないんです」
シュロさんの言葉に。
私は完全にその場に座り込んでしまった。