髪型は蘭と同じマッシュカット。
でも金色。
瞳の色は碧く、顔色は白い。いや、白というより青白いのだろうか。
遠目から見れば女性のような綺麗な顔立ちをしていた。
年齢は私より少し上。

前にも思ったけど。
やっぱり、この人。どこかで会った気がする。
「貴女は蘭の奥さん?」
どこか冷たいような低い声で言われた。
「はい。カレンって言います」
「ふーん」
そう言って男の人は私をじっと見る。
「あのさ。膝貸してくれる?」
「え?」
男の人はタオルで髪の毛をごしごしと拭き始めた。
「そこ座って」
とソファーを指さされ。
言われるがまま座る。
男の人は隣に座ってきたかと思えば。
ゴロンと寝っ転がって。
私の膝の上に頭を乗せた。
「ええ!?」
いわゆる膝枕状態だ。

何だ、この人。
蘭の護衛じゃないのだろうか。

「ねえ、君の顔にある痣って。本物の痣?」
久しぶりに痣のことを言われ。
思わず掌で痣を隠してしまう。
すっかりと、忘れていた。
「ごめんなさい。そうです。生まれつきなんです」
泣きそうになった。
膝の上でじーと見つめる男の人の視線が怖い。
「ふうん」
そう言うと。
少しだけ、男の人の口角が上がった気がした。

一瞬にして、私の心の中は絶望に襲われる。
そんな私の気持ちなんて知る由もなしに。急に男の人がニコニコと笑いはじめた。
間近で見る男の人はやっぱり綺麗な顔立ちをしている。
「蘭が結婚するなんてねー。面白いね」
蘭…と呼び捨てにしているのを聴いて。
やっぱりこの人は護衛じゃないのだと確信した。
だとしたら、誰だろう?

「あの。どこかでお会いしたことはありますか?」
思いきって尋ねると、男の人は「ん?」と眉間に皺を寄せた。
「この前、屋敷の前で会ったでしょ?」
「いえ、そうじゃなくて。多分、もっと前に・・・」
言い終える前に。
いきなり、扉が乱暴にバンッと開いた。

「おい、カレン。床がビッチョビチョじゃないか!」
物凄い剣幕で入ってきたのは蘭だ。
蘭は大声で入ってきたかと思うと。
「は?」と更に大声を出して私と男の人を見た。