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「カーレンっ。そろそろ、起きて部屋に戻ったほうがいいよ」
男の子の甲高い声に。
うっすらと目を開ける。
一瞬、自分がどこにいるのかわからなかった。
渚くんの顔が近かったので、「ひゃっ」と悲鳴をあげて。
ベッドから飛び降りた。
…そうだった。
渚くんとシュロさんと3人で過ごしたんだった。

トランプが思いのほか、盛り上がって明け方までしていたのまでは覚えている。
いつのまに、ベッドで眠ってしまったのか?
「あれ、シュロさんは?」
見回しても、シュロさんの姿はない。
「シュロは、朝食作りに食堂に戻ったよ。さっ、カレンも早く戻って! 俺、怒られちゃう」
「…うん」
寝不足で頭がぼーとするけど。
渚くんに迷惑はかけられない。
髪の毛が、ぼっさぼさのまま小屋を出て。
軽く小走りになる。

朝陽が気持ち良い。
玄関までやってくると。
人影が見えて、思わず足を止めた。
「…クリスさん?」
まぎれもなく、クリスさんが立っていた。
「クリスさんっ」
クリスさんの前に駆け寄る。
「おはよう。カレンちゃん。今日は一段と可愛いね」
サラリと笑顔で褒めるクリスさん。
でも、一日でやつれてしまったかのように見える。

「あの、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
頭を下げることしか、できない。
「…カレンちゃん。急いで、戻ったほうがいいよ。俺は大丈夫だから」
「でも」
「後でゆっくり話そうよ」
顔を上げると。
クリスさんは笑っている。

どうして怒らないのだろう?
私が悪いのに。