シュロさんの作る料理は本当に美味しい。
シチューは温かくて愛情がこもってる。
「おいしいです」
今日はいろんなことがおこりすぎて、頭が噴火しそうだったけど。
ようやく、落ち着いてご飯が食べられるような気がした。
シチューを食べていると。
じぃーとシュロさんがこっちに視線を送っているのに気づく。
「あ、おじいちゃんがエロい目でカレンを見てる!」
口の周りにパンのカスをつけた渚くんが大声で言う。
「見てねえって」
シュロさんも負けじと大声を出した。
「じゃあ、何でカレンのこと見てたの?」
「…痣ですよね。シュロさん」
人差し指でポリポリと痣を掻いてみせる。
「いやあ。そうじゃなくて。俺はただ、蘭がこんな立派なお嫁さんを見つけたのが意外というか…何というか。不思議だなぁーって」
そう言って。大きな目で私を見るので。
急に私は恥ずかしくなってシュロさんから目をそらした。
立派なわけない…。
「昔は誰とも仲良くしないで一匹狼だったアイツが立派な嫁さん貰ってさ」
「…昔?」
私が首を傾げると。
渚くんは、かかさず「どうしたの、カレン?」と突っ込んでくれる。
蝋燭の明かりが心地良い。
不思議な空間の中、3人での食事はとても心強い。
ビビは入口付近でしゃがみ込んで丸まっている。
夜はここで過ごしているみたいだ。
「いえ…あの、失礼な質問になっちゃうのかもしれないんですけど…」
「何、カレン?」
「あの…、シュロさんって昔の記憶はあるんですか?」
ずっと不思議だった。
私のことは一切覚えられないのに。
渚くんや蘭の昔のことは覚えているのはどういうことなのか。
渚くんはシュロさんと顔を見合わせた。
「カレン、サクラさんから聴いてないの?」
「え…そんなに詳しくは」
シュロさんは黙り込んでいる。
「あのね、カレン。シュロは生まれてから16年間の記憶はあるんだって」
そう言って、渚くんは「おかわり!」と言った。
「それ以降はね、寝るとすぐ忘れちゃうの。だから、カレンのことだけは覚えられないの」
(私だけ?)
ということは、皆。蘭とは昔からの付き合いということか。
シュロさんが持ってきてくれたブドウジュースを飲みながら。
あれこれと考える。
「…もしかして。シュロさんや渚くんって貴族の出なの?」
蘭と対等に話しているのを見ると。
皆、ワケあって身分を隠して此処で働いているのではないかと考えた。
どう考えても皆の共通点が見つからない。
蘭よりも身分が低く、ヘコヘコしているようにだって見えないし。
かといえ、学校で知り合ったというふうにも見えない。
貴族達はパーティーや夜会で知り合って仲良くなることが多いってお兄様が言ってた。
「おじいちゃんが…貴族?」
「渚が貴族…」
ほぼ同時に、シュロさんと渚くんが呟いて。
お互いの顔を見合わせると。
アハハハと大声で笑った。
「カレン、面白すぎ! おじいちゃんが貴族って」
「こんな、ちんちくりんの渚が貴族? じゃあビビも貴族になれるだろ」
お腹を抱えて笑う2人に。
私は黙って見つめるしかなかった。
「まあ…、カレンの言いたいことはわかるよ。蘭と俺達がどういう関係かってことでしょ?」
渚くんが核心を突いたので思わず「うん」と頷いてしまう。
「ごめんね、カレン。ここに住んでいると、本当に秘密ごとが多くて。俺だって出来ることは答えたいんだけどさ。掟っていうのが発生しちゃうの」
さっきまで勢いよく食べていた渚くんの手が止まる。
「ただ、言えるのは。ここに集う人達は選ばれた人ってことかな?」
「選ばれた人?」
思わず首を傾げる。
「うん。皆、個性豊かでしょ? 俺は見かけがコレで止まっちゃってるし。おじいちゃんは記憶が一日しかもたない。で、サクラさんは性別が女だったり男だったりするでしょ」
「クリスはサクラと逆で普段は男なのに夜になると女になるもんなー」
「え…」
シュロさんの言葉に驚く。
クリスさんが女…?
「こらっ、おじいちゃん。喋りすぎだよ!」
どうやら話してはいけない内容だったのか、渚くんがシュロさんに注意する。
クリスさんが女性になると聴いて、この前の夜に出会った違和感が解消された気がした。
(それにしても…)
お腹がいっぱいになって、ご馳走様をする。
こんなチャンスは滅多にない。
渚くんも、シュロさんも口が堅くない。
「ねえ。2人にとって蘭ってどんな人?」
シチューは温かくて愛情がこもってる。
「おいしいです」
今日はいろんなことがおこりすぎて、頭が噴火しそうだったけど。
ようやく、落ち着いてご飯が食べられるような気がした。
シチューを食べていると。
じぃーとシュロさんがこっちに視線を送っているのに気づく。
「あ、おじいちゃんがエロい目でカレンを見てる!」
口の周りにパンのカスをつけた渚くんが大声で言う。
「見てねえって」
シュロさんも負けじと大声を出した。
「じゃあ、何でカレンのこと見てたの?」
「…痣ですよね。シュロさん」
人差し指でポリポリと痣を掻いてみせる。
「いやあ。そうじゃなくて。俺はただ、蘭がこんな立派なお嫁さんを見つけたのが意外というか…何というか。不思議だなぁーって」
そう言って。大きな目で私を見るので。
急に私は恥ずかしくなってシュロさんから目をそらした。
立派なわけない…。
「昔は誰とも仲良くしないで一匹狼だったアイツが立派な嫁さん貰ってさ」
「…昔?」
私が首を傾げると。
渚くんは、かかさず「どうしたの、カレン?」と突っ込んでくれる。
蝋燭の明かりが心地良い。
不思議な空間の中、3人での食事はとても心強い。
ビビは入口付近でしゃがみ込んで丸まっている。
夜はここで過ごしているみたいだ。
「いえ…あの、失礼な質問になっちゃうのかもしれないんですけど…」
「何、カレン?」
「あの…、シュロさんって昔の記憶はあるんですか?」
ずっと不思議だった。
私のことは一切覚えられないのに。
渚くんや蘭の昔のことは覚えているのはどういうことなのか。
渚くんはシュロさんと顔を見合わせた。
「カレン、サクラさんから聴いてないの?」
「え…そんなに詳しくは」
シュロさんは黙り込んでいる。
「あのね、カレン。シュロは生まれてから16年間の記憶はあるんだって」
そう言って、渚くんは「おかわり!」と言った。
「それ以降はね、寝るとすぐ忘れちゃうの。だから、カレンのことだけは覚えられないの」
(私だけ?)
ということは、皆。蘭とは昔からの付き合いということか。
シュロさんが持ってきてくれたブドウジュースを飲みながら。
あれこれと考える。
「…もしかして。シュロさんや渚くんって貴族の出なの?」
蘭と対等に話しているのを見ると。
皆、ワケあって身分を隠して此処で働いているのではないかと考えた。
どう考えても皆の共通点が見つからない。
蘭よりも身分が低く、ヘコヘコしているようにだって見えないし。
かといえ、学校で知り合ったというふうにも見えない。
貴族達はパーティーや夜会で知り合って仲良くなることが多いってお兄様が言ってた。
「おじいちゃんが…貴族?」
「渚が貴族…」
ほぼ同時に、シュロさんと渚くんが呟いて。
お互いの顔を見合わせると。
アハハハと大声で笑った。
「カレン、面白すぎ! おじいちゃんが貴族って」
「こんな、ちんちくりんの渚が貴族? じゃあビビも貴族になれるだろ」
お腹を抱えて笑う2人に。
私は黙って見つめるしかなかった。
「まあ…、カレンの言いたいことはわかるよ。蘭と俺達がどういう関係かってことでしょ?」
渚くんが核心を突いたので思わず「うん」と頷いてしまう。
「ごめんね、カレン。ここに住んでいると、本当に秘密ごとが多くて。俺だって出来ることは答えたいんだけどさ。掟っていうのが発生しちゃうの」
さっきまで勢いよく食べていた渚くんの手が止まる。
「ただ、言えるのは。ここに集う人達は選ばれた人ってことかな?」
「選ばれた人?」
思わず首を傾げる。
「うん。皆、個性豊かでしょ? 俺は見かけがコレで止まっちゃってるし。おじいちゃんは記憶が一日しかもたない。で、サクラさんは性別が女だったり男だったりするでしょ」
「クリスはサクラと逆で普段は男なのに夜になると女になるもんなー」
「え…」
シュロさんの言葉に驚く。
クリスさんが女…?
「こらっ、おじいちゃん。喋りすぎだよ!」
どうやら話してはいけない内容だったのか、渚くんがシュロさんに注意する。
クリスさんが女性になると聴いて、この前の夜に出会った違和感が解消された気がした。
(それにしても…)
お腹がいっぱいになって、ご馳走様をする。
こんなチャンスは滅多にない。
渚くんも、シュロさんも口が堅くない。
「ねえ。2人にとって蘭ってどんな人?」



