Your Princess

まさか、渚くんとクリスさんが屋敷で生活していないなんて。
一ヵ月経った今でも気づかなかった。
それだけ、私は自分のことでいっぱいいっぱいだったのかと思うと。
自己嫌悪でいっぱいになる。
私は、自分のことしか考えてない。
だから、クリスさんが牢屋に行ってしまった。

罰といっても、注意される程度かな…と甘く見ていた。
まさか牢屋に入れられるなんて…。

「で、何で。俺が?」
納得のいかない様子で、シュロさんが立っている。
夜になって。
屋敷の裏にある小屋に。
私と、渚くんと、そしてシュロさんの3人が集まっている。
「俺、カレンと長時間2人きりになっちゃいけないって蘭に言われてんだ。どうせ、おじいちゃん暇でしょー」
(おじいちゃん!!)
渚くんは、からかうように。
上目遣いで、シュロさんを見つめた。
「おじいちゃんって、俺、おまえとそこまで年変わらないだろうが!」
「えー、シュロくん。もしかして自分が16歳って思ってんじゃないの?」
「俺は…16? え、何歳だ?」
2人のやりとりに、呆然としていたら。
くるりと渚くんが振り返って。
「カレン、ご飯食べよー」
と笑顔で言った。

屋敷の裏に、ひっそりとたたずむ小屋と言うが。
意外と小屋の中は広い。
クリスさんと渚くん2人分のベッドが奥にあるし。
手前には小さなキッチンとダイニングテーブルがある。
テーブルの上にシュロさんが「よいしょ」と言ってバスケットと寸胴鍋を置いた。

寸胴鍋の中にはホワイトシチューが入っていて。
バスケットの中には、パンや果物、飲み物が入っている。
幾つもの蝋燭に火を灯した渚くんは、嬉しそうだ。
コック姿のシュロさんは帽子を取ると椅子に座った。
「シュロは馬鹿だけど、料理だけは才能あるもんねー」
さっきから、シュロさんのことを馬鹿にするように言う渚くん。
ところで、シュロさんって結局、何歳なのだろう? と思いながら。
私も椅子に座った。

「いただきます」