Your Princess

15時を過ぎて。
ライト先生を見送った後。
もう一度、地下へ行ってみようと。
ホールへ行って扉を開けようとしたけど。
鍵が閉まっていたのか。
開かなかった。

次に、外に出て渚くんの姿を探した。
渚くんはバラ園で一つ一つのバラをチェックして見ていた。

「渚くん」

私が呼ぶと、渚くんはニッコリと笑ってこっちへ近づいてくる。
「カレン、会いたかったよ」
ニッコリと笑う渚くんを見たら急に胸が痛くなった。
「ごめんね、渚くん。クリスさんのこと…」
「へ? なんで、カレンが謝るの?」
「なんでって。だって私のせいで…」
渚くんは「ああ、うん」と言って。
急に笑顔を引っ込めた。
自分が犯した罪はこれだけ大きかったのかと。
恐ろしくなった。
渚くんから笑顔を奪った。

「クリスがさ。帰ってこないと。俺、眠れないんだー」
「眠れないって?」
急に話を振られたので、驚く。
「俺、一人だと眠れない性格なの」
急に上目遣いで、渚くんが甘えてきたので。
可愛い…と思ってしまう。
「じゃあ、私の部屋に来る?」
私のせいだ。
クリスさんが戻ってくるまで一緒に過ごせばいいと思った。

「駄目だよ、カレン。俺、基本的に屋敷に入っちゃいけないんだ」
「へ?」
衝撃的、事実。
「入っちゃいけないって…?」
「屋敷で生活していいのは、基本的に蘭とカレンだけなんだ」
「え…。じゃあ、渚くん達ってどこで生活しているの?」
考えてみれば。
屋敷の中で、渚くんやクリスさんを見かけたことはなかった。
「あ、唯一。屋敷でサクラさんは女の子だから寝泊まりしてるかなー…まぁ、時々男になってるけど」
私の質問にはすぐ答えず。
さらりと言った言葉に。
渚くんは、クリスさんが時々男の姿になることを知っていたのかと。
また、驚く。
「シュロはねー、食堂の屋根裏に寝泊まりしてるよ」
あからさまにシュロさんって、この屋敷のメンバーの中で年上なのかと思うが。
渚くんは思いっきり、呼び捨てだ。
「俺とクリスはね、小屋で暮らしてんだー」
「小屋!?」
「うん。カレン、行ってみる?」
と言って、渚くんは歩き出そうとして、「あ」と言って考え込んだ。

「俺、カレンと2人きりで長時間いるのも駄目だって言われたんだった」
「へ?」
次々と知る衝撃の事実に、驚き疲れた。