「お迎えに上がりました」
丁寧に頭を下げる男は、美少年だと思った。
車で蘭の家から迎えが来たときは両親は大喜びだった。
私はそんな両親を尻目にため息をついて。
必要最低限の荷物を持って車の前に立つ。
見送りに来ているのは両親だけ。
…やっぱり、うちの屋敷で働いている人はもういなくなったんだろうな。
「カレン、幸せになるのよ!」
充血した目でお母様は私に言った、
「達者でな!」
そう言うお父様の額の面積はつるんとしていて相変わらず広い。

娘がお嫁に行くというのに。
この人達はとにかくヘラヘラ笑っている。

ぴゅう…と強い風が吹いて。
私は両親に頭を下げた。
「お世話になりました」