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どうして。
朝が来るんだろう。

カーテンから零れ出る朝日に絶望する。
いつのまにか寝てしまっていた。
ベッドから出たくない。

起きると同時にまた涙が溢れてくる。

「カレン、そろそろ支度…」
いつもだったら、サクラさんの声がするはずだったのに。
男性の声なので、蘭かと思い身構える。

入ってきたのは、サクラさんに似た男性だった。
執事の格好をした男性。
「あの、サクラさんは?」
顔の部分をシーツで隠す。
「え、私がサクラだけど」
「え?」
思わず(まばた)きをしてみるが。
目の前にいるのは、サクラさんじゃない。
サクラさんに似た男性だ。
「えーと…。私が言っているのは、いつも私の世話をしてくれる女性のサクラさんで」
「だから、私がサクラだって言ってるでしょ!」
そう言って。
男性は私からシーツを引っ張り取った。
「今日は、男性の日なんだから。この格好なのは仕方ないでしょ! とにかく支度して!」
「男性の日って…」
頭がついていかない。
目の前の男性をじっと眺めるが、頭が働かない。
そんな私を見て、男性はため息をついた。
「ハイハイ。わかったわよ。私は出ていくから、とにかく支度して」
「サクラさんはどこに・・・」
「だーかーらー!」
あまりにも鬼の形相をしていたので。
私は「わかりました」と言ってベッドから飛び出す。

泣きすぎて、頭がおかしくなっているのかもしれない。
身支度をしながら。
もしかして、さっきの人はサクラさんのお兄さんか弟さんなのかなと思った。
顔がそっくりだ。
違うのは髪型と骨格と言ったところ。
「でも、いきなり女性の部屋に入らないでほしいなー」
結局。
授業を休みたかったのに。
サクラさんに似た男性に怒られたせいで。
休むタイミングを逃してしまった。