「わーい!」
そう言って。渚くんは全速力で庭を駆け巡る。
気づけば、犬のビビが渚くんと一緒に走っている。
衝撃的な事実に、私は渚くんを目で追ってしまう。
「クリスさん、嘘ですよね。渚くんが15歳って」
どう見ても年下。
同い年の身体つきじゃない。
…けど。
(あれ、私が発育の良い身体なのか?)
ここに来てからショッキングなことが大きすぎて。
正常な判断が出来ない。
「嘘じゃないよ。カレンちゃんと蘭と、渚は同い年だよ」
「世間ってそういう…もんなんですか」
私は思わず頭をおさえた。
クリスさんはニカッと笑うと。
「渚はちょっとアレだから、あの見かけのまま成長が止まってるんだ」
「……また」
「ん?」
クリスさんを見る。
「シュロさんと同じように、渚くんも。もしかして病気か何かなんですか?」
気づけば手が震えてきた。
「渚は病気とは、違うかなー。シュロもどっちかというと病気というか…。まぁ、病気みたいなもんか」
もし病気だとしたら、どうしてクリスさんは白い歯を見せてニコニコ微笑んでいるのだろう。
急にクリスさんとの間に壁を感じる。
良い人そうに見えて、きっとこの人は。
私の顔をキモチワルイと思ってあざ笑っているに違いない。
「まあ、カレンちゃんの生活には影響でないように配慮はするから。大丈夫だよ」
「…どういう意味ですか、ソレ」
クリスさんの言葉に驚いて悲鳴をあげそうになる。
クリスさんは黙ってニコニコしているだけだ。
「あ…。私、部屋に戻ります」
クリスさんに頭を下げると。
私は踵を返して急いで部屋へと戻った。

怖い。
クリスさんも、渚くんも、そしてシュロさんも怖い。

誰一人として、私の前で本心なんか打ち明けないに違いない。
私はキモチワルイのだから。