「ライ…ト先生?」
立ち上がって、もう一度顔を眺める。
ついこの間まで、家庭教師だったライト先生が目の前に立っている。
「嘘ですよね、ライト先生? 私の知っているライト先生じゃないですよね?」
「んー。驚くのも無理はないかもしれないけど。君の知っている家庭教師のライトに間違いはないよ」
そう言って。
ライト先生は眼鏡のズレを直した。

約2年間。
ライト先生は私の家庭教師だった。
最後に会ったのは一か月前だったか。
「どうして、ここに?」
「あー。蘭くんからオファーがあってね。また、君の家庭教師を引き受けることになったんだよ。よろしく」
「蘭が…?」
思わぬ言葉に、私は先生を凝視する。

ライト先生は確か20代後半だろうで。
お兄様のツテで私の家庭教師になってくれた。
歴代の家庭教師の中では一番優しくて丁寧な先生だった。

優しそうな目で先生がこっちを見る。
「あの。先生、蘭とは一体どういう繋がりで?」
「それは教えられないかな。ま、座って。さっそく授業を始めようか」
そう言うと先生は重たそうなカバンから。
何冊かの本とノートを取り出した。