「緊張してんの?」 「す、するでしょ」 わたしが赤くなればなるほど、千景くんはそんな様子を楽しむかのように笑う。 「早く乾かしてよ。風邪引いちゃうから」 ズルい、そんな言い方。 ドライヤーを握る手が震えたけれど、なんとか恥ずかしさを押し殺して千景くんの髪に当てる。 この柑橘系のにおい、好きだなぁ……。 サラサラの髪には光沢があって、とても指通りがいい。 髪の毛の1本1本までもが千景くんの魅力を最大限に引き出していて、どれだけわたしをドキドキさせたら気が済むの。