「どうして、千景くんが謝るの……?」


キョトンとした表情を浮かべる綾乃は、意味がわからないと言いたげ。


「綾乃は悪くない。俺が一方的に……」


嫉妬して、ムカついただけ。


「でも……怒ってた、よね?」


「怒ってないよ。スネてただけだから」


今も今野に対してめちゃくちゃ嫉妬してる。


俺じゃなくて今野を頼った綾乃。


でもそれは、綾乃にとって俺は頼れる男じゃなかったってことだ。


悔しいけど、事実として受け止めるしかない。


「スネる……?」


さらに首をかしげる綾乃の顔に、どうして?と書いてある。


今の俺はバカみたいに情けない顔をしているだろう。



黙り込んだままでいると、綾乃がふぅっと息を吐いた。


「あの、助けてくれて、ありがとう。千景くんが来てくれたから、怖くなかったよ……」


そんな優しい言葉をくれる綾乃に、自分の情けなさが浮き彫りになって拳が震えた。