「あっ……。そろそろ髪を切ってもらわなきゃな……」

髪をとかしながら堤未来(つつみみく)は呟く。一年かけて伸ばした髪は肩を超えていた。髪を切りに行くと考えるだけで胸が高鳴り、頰が赤く染まる。

鏡の前から離れると、未来はドキドキしながらスマホを手に取る。電話帳をタップし、電話をかけ始めた。

「お電話ありがとうございます!Floraです!」

明るい女性の声とFloraという店名に、未来の高鳴りはますます増していく。ドキドキしながら未来は口を開いた。

「いつもお世話になっています、堤です。カットの予約をしたいのですが……」

未来がそう言うと、女性は「かしこまりました。お時間等はいかがなさいますか?」と訊ねる。曜日と時間を未来は言い、美容室の予約は順調に進んでいった。

「担当はご指名はありますか?」

その言葉を聞いた刹那、未来はすぐに「花巻さんでお願いします!」と言っていた。電話を切った後、大きく息を吐く。顔が火照って熱い。