もしもここでゲームを降りてしまったら、私の負け。私はどちらかのものになる……。

ドクドクと忍の心臓が緊張し始める。これほどカジノで緊張するのは久しぶりだ。初めてカジノに足を踏み入れた時のことが忍の頭に浮かぶ。

最初は何となく始めたカジノが、いつの間にかスリルを与えてくれるものになっていた。イケナイ大人の遊び。夜の素晴らしいゲームの時間。忍にとって自由を謳歌できる時間だ。

この時間を、自由を、手放したくない。忍は二人の持つカードが何かを考えながら「コール」と言う。相変わらず二人のポーカーフェイスは崩れない。キングと呼ばれるだけあると忍は感心した。

自分の手に揃えているのはフラッシュ。もしも二人が一番強いロイヤルストレートフラッシュなどを手元に揃えていたら忍の負けだ。しかし、キングの二人なら強いカードを揃えている可能性は大いにある。

「忍ちゃん?ゲーム続けるの?降りるの?」

「早く言ってくれないと勝負が続かないんだけど」