上司は優しい幼なじみ

「たっくん、残業していたの?」

「まぁね。でもすぐ終わったよ」

「パスタもいいな」とつぶやきながら、メニューを私に向けたままたっくんもじっくり料理を選んでいる。

正面に座るたっくんの顔を眺めてしまう。
なんだか…本当に大人になったんだなぁ。

それに比べて自分はどうだろうか。
ちゃんと大人になれているのだろうか。

「これ、うまいよ」

パスタメニューのジェノベーゼを指さす。
その手がごつごつしていて少し血管が浮き出ている。
手首から高級そうな腕時計がチラリと顔をのぞかせた。

そこに’大人’を感じさせる。

「そ、そうなんだ!じゃあ私、これにしようかな」

「いいの?じゃあ頼もうか」

たっくんが先ほどのウェイターを呼び、慣れたように注文を進める。
最初に運ばれてきた水を一口飲み、喉を潤した。