「さくら、分かるよな?」
お父さんの目はわたしをしっかり見据えている
「言うことを聞け」
と言っている。
「………」
「家にも、相手方にも迷惑かけないように」
黙ったわたしを見てお父さんが席を立ち部屋から出ていった。
それを言うために今日は珍しく早く帰ってきたのかな。
それを言うために一緒に食事したのかな。
お父さん…
約束は、守るよ。
ちゃんと守るから、
お願いだから、もう少しミナトといさせてよ。
こんな事を思うわたしは、自分の事しか考えていなかった。
お父さんのことも
ミナトのことも
誰のことも
考えていなかった。
ただただ、自分の事しか考えていなかった。



