彼女は本当に桜のような女の子だった。


綺麗で、儚くて。



生徒手帳を届けた日、サラサラとした黒髪を靡かせるさくらを見たあの日から俺は恋をしていたんだと思う。

あの瞬間に一目惚れをしていたんだと思う。


喫茶店で微笑んだ表情も、花見をした時に見せた消え入りそうな表情も、どれもが心を惹き付けて止まなかった。



真っ白で小さな手も、よく笑うところも、人には直球すぎると言うくせに自分だって照れてしまう様な言葉を言えてしまうところも。

照れた表情も、涙をさえも。

優しくて温かい心も、真っ直ぐな瞳も。


全てが俺の全てだった。





儚くて美しく、可憐なきみへ。



華山さくらを形作る全てが愛しかった。

永遠に触れていたかった。


簡単にどこかへ消えてしまいそうなさくらを、ずっとこの腕の中で抱きしめてたくさんキスをして、二人で笑っていたかった。



今もまだ、覚えている。

忘れることなんて出来ないだろう。


さくらを形作るものに触れたこの感覚を。

さくらに触れたあの温もりを。