─覚悟があってもその重みに耐えられるかはその状況になってみないとわからないんだよ─
いつかのお父さんの言葉が蘇る。
嗚呼そうか。
お父さんはこういう事を言っていたんだね。
今更その言葉の意味がわかったって、もう、何の意味もない。
ミナトが夢を、家族を、友達を捨てることを心の底から受け入れられないわたし。
本当にミナトにそんな事をさせていいのかと今でも不安に揺れる心をミナトは見透かしていたのだ。
家族ともう会えないなんて。友達ともう会えないなんて。そんな残酷なことをミナトに強いる事が嫌で。
だって、まだ会ったことはないけれどミナトを産み育ててくれたご両親はミナトと同じように温かいはずで。
ミナトだけじゃなくそんなご両親にも悲しい思いをさせてしまう。
昨日見た友達といるミナトはとても楽しそうで。そんな毎日を、未来をわたしが奪ってもいいのかがわからなくて。
わたしの前で話してくれた教師の夢を、わたしが破っていいの?
受験勉強を頑張っていた事を知ってるのに。
話してくれた時の照れくさそうでだけど希望に溢れていた表情が頭から離れてくれなくて。
ミナトといられる事が一番の幸せで。
ミナト以外に大切なものなんかないのに。
だけどそのミナトを犠牲にする事はどうしたって出来ない。
それだけは出来なくて。



