帰ろう⋯。
帰ろう⋯?
「え⋯、ミナト⋯?何言って、」
「帰ろうって言ったんだよ。さくら」
「⋯っ何で、」
「帰ろう」
「帰ろうって、意味わかってるの?昨日駆け落ちだって言ったじゃんっ⋯、一緒に逃げるって⋯、待ってよ、ねぇ、待って⋯、」
「もう駆け落ちは終わり。これ以上はどこへも行けない」
「一緒にいられなくなるかもしれないから駆け落ちしたんだよ⋯?帰るって事はもう、一緒にいられなくなっちゃうって事だよ!?」
「わかってる。だけどもう無理だろ?」
「無理って⋯何が⋯」
「さくらも俺も、全ては捨てきれない」
ミナトの言葉が頭の中でグルグルと回る。
呼吸がし辛くなって、はっ、と短い息が零れた。
「さくら、知ってるんだろ?俺がさくらのお父さんに言われたこと」
「っ」
「俺はさくらとの未来を引き換えに教師の夢を捨てたって構わない。さくらの事が何よりも大切だから」
「⋯っ」
「このままさくらと二人でどこかへ行って、親とも友達とも二度と会えなくても仕方ないって思えるくらいにはさくらの事を愛してるよ」
「⋯っ、」
「だけど⋯それにさくらは耐えられないんだろ?」
わたしを見つめる瞳は、全てを見透かしている。
語りかける声は優しいのに、芯があって。



