ミナトな連れてこられたのは浜辺で、早朝だからかまだ辺りは暗く、太陽はほんの少ししか顔を出していなかった。
穏やかな波音だけが聞こえる静かな世界で、柔らかい風がミナトの髪の毛を揺らす。
わたしはミナトの髪の毛が好きだ。
柔らかくて、優しい色で。
太陽に照らされると生まれつき薄い色をしたその髪色がより一層透明感が増して。
気持ちよさそうに靡く髪の毛が好きだった。
だけど今は、何だか落ち着かない。
風に吹かれる髪の毛は相変わらず柔らかそうで。だけどそのまま風に吹かれてどこかへ消えてしまいそうな気がして。
ミナトごといなくなってしまう気がして。
「⋯っねぇ、ミナトっ?」
海に来てから一度も声を発しないミナトに不安になって繋いだ手に力を込めて引き寄せるようにその手を引っ張る。
そうしてやっと、ミナトは声を発し────、
「帰ろう、さくら」
目の前が真っ暗になった。



