「泣くなよ」
「⋯っう、」
「泣き止んで」
「⋯っ、ごめん、ミナト」
「いいから。そんなの全部どうだっていいから。だから泣き止んでさくら」
「⋯っふ、う、」
「泣かないで」
とめどなく溢れる涙をミナトは何度も何度も掬う様に拭っていく。
このまま二人きりでいたいのに。
ミナト以外どうだっていいのに。
その気持ちは嘘なんかじゃないのに。
この期に及んで受け止めきれない現実に泣き出してしまうわたしはどうしようもない弱虫で。ミナトを困らせてしまうだけだとわかっているのに流れる涙を止める事が出来なかった。
「⋯さくら」
「⋯ミナト、」
「好きだよ」
「⋯っ、」
「どうしようもなく好きだ」
涙を拭う手を止めてわたしの頭に手を回したミナトの胸に引き寄せられる。
ミナトの香りと体温に包まれて。
しっかりと耳に届く鼓動の音。
そうしてやっと涙が止まる。
二つ敷かれていた布団の真ん中で、抱きしめ合って眠りについた。
このまま時が止まってくれたらいいのに。
そうすれば悩むことも迷うこともなく、涙を流す事もなくこの腕の中で幸せだけを感じていられたのに─────────。



