夏のシーズンは海水浴客で溢れる事もあり、海辺の周りにはいくつか小さな宿がある。
そのうちの一際小さな宿で受付をしたわたし達は、決して綺麗とは言えないけれどこじんまりとした安心感のある部屋で二人共に眠る事にした。
このままミナトの手を取ってどこか遠くへ行ったなら、今とは違って贅沢も出来ないだろうけれど、小さな小さな部屋でこうして薄っぺらい布団をくっつけ合って眠るのだろうか。
もしかしたら布団を二つ買う余裕なんてなくて、一つの布団で二人で寝ることになるかもしれない。
それでいい。
その方がいい。
ミナトの隣に立って、ミナトに触れる事が出来るならばそれだけで充分だから。
「ミナト起きてる⋯?」
なかなか眠りに付けないのは家とは違う布団だからではない。
「ん、起きてるよ」
向かい合っていたミナトの瞳がゆっくり開く。暗がりでもわかるのはその瞳がとても優しくわたしを見つめているということ。
それだけで、堪らなく嬉しくて泣きそうになる。



