ザザン、と波音がする。
寄せては返す波。
水平線の向こうには、一体何があるのだろう。
「さくら」
座るのに丁度よさそうな流木に腰掛けていたわたしに後ろから声を掛けたミナトの手には近くのコンビニエンスストアで買ってきた温かい飲み物があって。
「コーヒーとココア、どっちがいい?」
「聞かなくてもわかるでしょ?」
「うん。はいどうぞ」
「ありがとう」
わたしにココアのペットボトルを差し出したミナトは白い息を吐きながら隣に座った。
「この海懐かしいな」
「懐かしいっていうほどでもないよ」
「それもそうだね」
二人で眺める大きな大きな水面は夕日に照らされて煌めいている。
⋯ここは、初めてミナトに告白された海。
あまりいい思い出とはいえないけれど、大切な場所だったからわたしはここに行きたいと言った。
「なんか駆け落ちみたいだね」
「え、そうじゃないの?」
冗談っぽく、だけどその声は真剣で。
「そうだよ。駆け落ち。なんかドキドキしちゃうね」
「さくらとだったらどこへでも行けるよ」
「わたしもだよ」
二人ならどこへでも行けると本気で思った。
ミナトがいればどんな事だって出来ると思った。



