凛也さんと会うことをミナトとは咎めたりしない。

それはわたしとミナトの間に信頼関係があるからで。

ミナトがわたしの家の事情を理解してグッと堪えていてくれているからで。

だけど本当は嫌だという事を、ミナトは決して口にはしないけれど思っていると思う。

それは自惚れとかではなく、ミナトの些細な表情からわかる事で。




────────ミナトを思うなら離れた方がいいんじゃないか。



考えたくない事ばかりが浮かんでは消え、浮かんでは消え。



希望が見えたはずなのに、その希望は紙一重で絶望に変わる。



「⋯八年⋯、八年か⋯」




その間、普通だったらミナトの人生は煌めきに溢れているだろう。

大学生活を謳歌して、夢だった教師になって。

充実した毎日を笑って過ごしているはずだろう。




わたしが待っていてという事はその輝かしい未来を奪ってしまう事になるんじゃないか。



そう思ったら怖くて怖くて堪らなかった。


ミナトの事はすごく好きだ。

世界で一番大好きだよ。


だけど、だからこそ、ミナトの手を取るのは今じゃないといけない気もするんだ。




全てを捨てて今、ミナトを選ばなければ、わたし達に明るく温かい未来は来ない気がするんだ。