「つまり話を纏めると、八年の間で俺たちが結婚しなくて済む利益と実績、信頼関係を作り出す。そうすれば結婚しなくても文句を言う人間はいないだろう。尤も、俺たちの婚約を知っているのは社内でも極わずか。互いの親が了承すれば簡単には済む話だ。だから八年は俺に時間をくれ」
「⋯っ」
「わかってる。八年という月日は決して短くはない。ただ、最低でも八年間は必要なんだ」
凛也さんの言う通り、八年という時間は短くはない。
八年後わたしは26歳で。
ただ、わたしと凛也さんの結婚を白紙にする為には絶対に八年は必要で。
自由になる為の八年。
ミナトと共に過ごせる為の八年。
その為なら八年間くらい捧げられる。
そう思う気持ちは本当だけど、八年間という代償は軽いものではない。
「⋯⋯とにかく、俺はその計画で動く。八年後、さくらがどんな答えを出すのかは自由だ」
黙り込んだわたしに掛けられた言葉はとても重くて。
好き同士ではないわたし達は必ず八年後、別の道を歩んでいく事になるだろう。
ただ、結婚がなかった事になった時わたしがどんな道を選ぶのかは自由だという事。
その時一人でいるのか、ミナトといるのかは⋯。



