「なっ⋯⋯かった事って⋯、」
あまりの衝撃的な言葉に思考が上手く働かない。
だって、え?
結結婚をなかった事に出来る⋯?
「それってどういう⋯?」
分かりやすく困惑するわたしを一瞥してから横に置いてあった鞄から一枚のファイルを取り出した凛也さんはわたしとは違い至極冷静に言葉を続けた。
「まず、俺たちが結婚をしなければならない理由」
「理由なんて⋯」
「ない」
「⋯っ」
「ただ、互いの家の結び付きを強くする為に身内にしておきたいというだけの結婚だ」
「だからって、結婚を白紙にする事が可能なんですか⋯?」
「⋯⋯これを見ろ」
そう言ってファイルから取り出されたのは、一之瀬が経営する会社の資料らしきもので⋯。
「うちが華山と手を組みたいのは今後事業を拡げていく中で、華山と手を組んだ方が良いからだ。業種は違えどうちと華山が組めば他社に差をつけられる。うちが苦手な分野では華山が、華山が不得意な分野ではうちが」
「つまり、上手く手を組めばお互いより一層会社を大きく出来る」
「ああ。うちは貿易関係だけではなく近頃リゾート経営にも力を入れている。そこで建築関係の子会社を持っている華山と手を組みたい。華山も海外の建築関係を請け負う事が出来れば、大きな利益になるだろうし」
どちらかと言えば海外向けに事業を展開している一之瀬と、国内で事業を拡げてきた華山。
一見正反対に見える経営の仕方だけど、だからこそ手を組めば互いのチャンスになる。



