あの後、後部座席に乗り込むとそこには想像通り凛也さんも座っていて。その表情は普段と変わらない様に見えた。
何があったのか、どうしたのか、そう聞きたいのにわたしがそれらを問う前にゆっくりと発進した車。それと同時に目を閉じてしまった凛也さんに何かを言うことは出来なかった。
約五分ほどして車が止まったのは小さなコインパーキングで。
車を停めた後、車から降りてどこかへといってしまう運転手。
「あの、運転手の方は⋯」
この二月の夕方にさすがに外で待たせるのは申し訳ないと思いそう声に出せば「近くに喫茶店がある。そこで待つように言ってある」と言う凛也さんの言葉にそれならば大丈夫だろうと安心する。
それにしても⋯。
運転手の方をわざわざ外してまで一体どうしたというのだろう。
「あの⋯、」
「この結婚、なかった事に出来るかもしれない」
“一体どうしたんですか”そう言おうとしたわたしの言葉は、あまりにも衝撃的な彼の言葉に掻き消された。



