「~~っなんで⋯そんなことっ、」
その話を聞いてミナトが最悪の決断をしようとしていたら⋯?
居てもたってもいられなくなって、視界が歪む。
そんなわたしに追い打ちをかけるようにしてお父さんが言葉を続けた。
「彼は教師になりたいそうだな」
「何でそれを⋯」
「少し調べればわかる。受験した大学もな」
もう、この後の言葉は予想出来てしまった。
あまりにも在り来りで、あまりにも残酷で。
「いいか?さくら。よく聞きなさい。俺はお前たちを認めない。絶対にだ」
「⋯、」
「さくらが俺の目の前にいる内は絶対に彼との交際を認めはしない」
「⋯お父さん、」
「それが嫌なら駆け落ちでもなんでもすればいい。会社も従業員の事も、親の面目なども全て捨てて彼とどこか遠くへ行きなさい。どこへ行ったかわからなければ俺はお前たちを追いかけてまで連れ戻す事なんてしない」
「⋯」
「但し、その覚悟が二人にあるならば」
「っ、」
「二人だけでどこかへ行くという事は誰にも頼る事が出来ないという事だ。全てを犠牲にするという事だ。従業員や会社の利、親の面目、もしかしたらそれらはお前にとってどうでもいい事なのかもしれない。だがな、さくら。全てを犠牲にするという事の意味をお前は理解しているか?」
鋭く厳しいお父さんの瞳に、わたしは思わず言葉に詰まってしまった。



