お父さんの書斎に呼ばれ、そこへ向かえばデスクの前で椅子に腰掛けたお父さんがいた。
「最近はどうだ」
「どうだって一体なんの事?」
こうしてお父さんと顔を合わせるのは久しぶりで、それはわたし達の間に何の進展もない事を表している。
どうしたって冷たくなってしまう声。だけをそれを直そうなんて思わなかった。
「試験はどうだった」
「手応えはある。きっと大丈夫」
「⋯そうか」
こんな話はいい。お父さんが聞きたい話はわかっている。
「それで、お父さんが聞きたいのはミナトの事でしょ?」
静かな部屋で、お父さんが軽く息を吸う音が聞こえた。
「まだ彼と付き合っているのか?」
「うん、付き合ってるよ」
「⋯あれ程言っただろう」
「わたしも言ったよ。ミナトが好きだからミナトと一緒にいるって」
「っさくら!」
大人のくせに簡単に声を荒らげるお父さんはどこか大人気ない。
それはわたしがあまりにも頑固だからだろうか。
それとも、凛也さんと結婚した方が幸せになれるという親心からか。
どちらにせよ、わたしは早くこの場から去るつもりだった。
話し合わない事には何の解決策も見つからないし、わたしは大人たちに逆らえず凛也さんと結婚する事になるとわかってはいても、ミナトを否定される事は、わたしの想いを否定される事はとても耐え難かったから。
「何を言われてもわたしの想いは変わらないよ」
そうハッキリとお父さんに伝えて、部屋を出ようと踵を返そうとした時だった。
「彼の将来がどうなってもいいのか」
低く唸るみいな、脅しの様な言葉が聞こえたのは。



