「そろそろ受験だね」
「あー、⋯考えたくないな」
「ミナトなら大丈夫だって」
放課後、受験勉強兼デートも兼ねて図書館に立ち寄った。
もうすぐそこに迫った受験にミナトは相当気が滅入っている様で、最近はわしが受験の「じゅ」を言っただけで「わーそれ禁句」と耳を塞いでしまう始末だ。
ミナトが受けるのは国立大学。相当ハードルが高いのだろうけれど、ミナトは頭が良いし成績も優秀。模試でも良い判定をもらっているらしくて油断しなければほぼほぼ合格出来るだろう。
といっても実際にわたしにはその大変さも難しさも全てを理解する事は出来ないだろうから、出来る事といえば全力でサポートして応援するのみなのだけれど⋯。
「高校受験の時もそうだったけどマジで精神削られるんだよな」
「本当、お疲れ様だよ。だけどミナトならきっと大丈夫だから」
「うん。ありがとう。さくらも一緒なら頑張れる」
「そうだね」
わたしも一応受験はするけれど、そこは代々家の人達が卒業していった大学だし、その為に今まで勉強をしてきた。何しろ今通っている高校がその付属高校だしで、あまり心配はない。
「なぁ、さくら」
ペンを止めたミナトが休憩と言わんばかりに背を椅子の背もたれへとつける。
「最近は受験も近いしであまり会えなかったでしょ?」
「うん」
「だから、受験が終わったらいっぱい会いたいんだけど⋯いい?」
そんなことわざわざ聞かなくったってわかっているはずなのに。
「いいよ。わたしもミナト不足だしいっぱいデートもしたい」
「嬉しい。これで受験も頑張れる」
本当に嬉しそうに笑ったミナトは、どんな気持ちを抱えていたんだろう。



