席から立ち上がり、凛也さんへと頭を下げる。
「どうか⋯お願いします」
「⋯馬鹿な真似はよせ」
「凛也さんがわたしを好きではないのなら、この結婚、白紙にして頂けませんか」
頼れるのはもう、彼だけだ。
お父さんは絶対に頷かない。
凛也さんのお父様もまた同様だろう。
利益。互いの会社の結束。当人ではない大人達は、わたし達の気持ちなど取るに足らないものだろうから。
だけど凛也さんは違う。
当人であり、彼もまた仕方がない事だと諦めつつもこの結婚にうんざりしている。
「凛也さんなら、わたし達が結婚する以外に道を見つけられるんじゃないですか」
人任せかもしれない。
凛也さんにとったらとんだ迷惑かもしれない。だけど今は彼に縋るしか出来ない。
「お願いします、お願いしますっ⋯、」
「おい、」
「ミナトの事が好きなんですっ、お願いします⋯!」
何度も何度も頭を下げるわたしに珍しく凛也さんが戸惑っていたけれど、そんな事言ってしまえばどうだってよかった。
あと三ヶ月だ。
あと三ヶ月でわたしの運命が決まる。