「せっかくのクリスマスだというのに随分と辛気臭い顔をしているな」
翌日、父の計らいもあって凛也さんと食事をする事になっていた。
クリスマスだというのに貸切にされたレストランは何だか寂しさを漂わせていて、素晴らしいフレンチのコースもあまり進まない。
凛也さんにも指摘される程、辛気臭い顔をしているわたしは昨日と落差に退屈を感じるだけだ。
ドキドキもしなければ、嬉しくなる事もない。ミナトと過ごした昨日が夢だったんじゃないかって思ってしまうくらい今日は目に映る景色に色がない。
「昨日は彼と会っていたのか?」
「⋯趣味の悪い質問ですね」
「不貞を働いている人間が何を。笑わせるな」
「不貞⋯」
確かにわたしはミナトと付き合っていて、昨日身体も重ねた。
それは世間一般にいう、浮気というものなのだろう。
だけどわたしが好きなのはミナトだ。
最初から最後までミナトただ一人。
もしそれを凛也さんが気に入らないのであればさっさと婚約なんて破棄にしてもらって構わない。
そのせいで他の人に迷惑がかかってもいいとは言えないけれど、わたしにはミナト以外考えられない。
「わたしはミナトが好きです。これからもずっと」
「そうか」
「凛也さんには大切な人はいないんですか?」
「つまらない質問だな」
「愛する人はいないんですか?」
持っていたナイフとフォークを置いて、正面から向き合うわたしに凛也さんは一口ワインを口に含んだ後、自嘲する様にその口角を上げた。



