「ねぇ、ミナトっ?」

「っなに?」

「離れないでね」



ミナトの手のひらがわたしの手のひらを覆って、指が絡まる。

全てが初めてで、痛みにも気持ちよさにもヘトヘトになって、もう力なんて入らないけれど。

絡めた指にキュッと力を込めた。




「離れないで⋯お願い」

「さくら⋯」

「好きなの、ミナトの事が大好きだから⋯お願い、ミナト」

「離れないよ」

「っ」

「離さない。約束する」




今にもこぼれ落ちそうな涙を繋いでいない方の指先で拭ってくれたミナトは、真っ直ぐにわたしをその瞳に捉えたまま、力強く言葉を紡いでいく。




「俺もさくらの事が大好きだから。だから離してなんてあげない」

「⋯っミナト、」

「だからさくらも俺を離さないでいて」

「⋯っ」

「二人とも離さなければ離れる事は絶対にないだろ?」



離れる事は絶対にない。


その言葉に頷くわたしの瞳からミナトが拭いきれなかった涙が流れる。

その涙を「綺麗だ」と言いながら愛おしむ様に瞳を細めて、涙に口づけたミナトにもうこれ以上わたし達を引き裂く出来事なんて訪れませんようにと願った。







この夜、わたし達は禁忌を侵した。


その罰は、一体何なのか。

この時のわたしには知る由もなかった。