「よし、終わり!」



髪の毛を乾かし終えてドライヤーをローテーブルへと置こうと、体を前のめりにするわたしと、「ありがと」と言ったミナトの動きが重なったのは、本当に偶然で。


唇が触れてしまうギリギリまで近付いたお互いの距離に思わず手に持っていたドライヤーを落としてしまった。


ゴトンと音を鳴らして落ちたドライヤー。


だけどきっと、この時のわたし達にはドライヤーが落ちた音なんて聞こえていなかった。


まつ毛の生え際さえわかる至近距離で、大好きな人と見つめあって、交わる熱に、理性を保つ事なんて不可能だった。




どちらからともなく重ねた唇は、シャワーを浴びた後だからかとても温かく気持ちよくて、唇が離れるよりも早くもう一度キスをした。



二人きりの部屋で何度も交わすキスの音は欲情を煽る。



「さくら、」



ミナトの手のひらが後頭部に回り更に深いキスになると、もう何かを考えている事すら億劫で、ただただ夢中でキスを交わす事しか出来なかった。