そしてわたしはある事に気付く。
「これ⋯」
ベッドサイドのテーブルに置いてあったのは、ミナトに出会ってすぐの頃、二人で寄った雑貨屋さんで見たガラス細工の置き物。
黄色のそれは、わたしがミナト色だねって言ったもので。
「買ってたんだ⋯」
あの日、わたしの気付かない内にミナトはこの置き物を買っていた。
そして大切に飾ってくれている。
ただ、この置き物が気に入っただけかもしれない。デザインが綺麗だなって思っただけかもしれない。
だけど、わたしが黄色はミナトの色だねって言っていた物をミナトが買っていた。
わたしの言葉なんて購入した事になんの関係もないのかもしれないけれど⋯凄く、嬉しい。
キラキラと輝くそれにそっと手を伸ばす。
触れたそれは冷たいはずなのに、不思議な事に温かく思えて。
愛おしむ様に指先で丁寧に撫でれば、どうしようもなく胸がキュッとなった。
「さくら」
「っ!!」
「どうかした?」
「っううん、なんでもない!」
突然後ろから掛けられた声に、悪いことなんてしていないはずなのなに大袈裟に肩が跳ねる。丁度ミナトの角度からはわたしが置き物を触っていた事は見えていないようで、「なんでもない」と言って部屋の入口にいるミナトの方へと向かった。
置き物の事を聞いてもいいけど、どうして買ったの?って聞くのはなんだか野暮な気がしたから。⋯というより、わたしがミナトにピッタリの色だって言ったから黄色のガラス細工を買ったって思いたかっただけかもしれない。



