待ち合わせは、大型複合施設に併設されている駅。
10分前には着くように来たはずなのに、そこにはもうミナトの姿があった。
「ミナト!待たせちゃったね、ごめん」
小走り出掛けよれば、わたしに気が付いたミナトは「んーん」と首を振った。
「まだ約束の時間より早いし、俺が楽しみ過ぎて勝手に早く来ちゃっただけだから」
「⋯わたしも楽しみだったよ」
「なんかさくら今日モコモコしてる」
「モコモコ?」
「服」
そう言われて、改めて自分の服装を思い返してみれば、白いコートの裾にはフワフワのファーが付いていて、マフラーもクルクル巻いている。
髪の毛も、今日は少しだけ巻いて来た。
「えへへ、可愛い?」
くるりとその場で一周して、冗談でそう聞けば──────、
「うん、可愛い」
「っ」
「可愛いよ」
ミナトは真面目な顔をしてそう言うから、こっちが赤面してしまった。
「み、ミナトってそういう事サラッと言うよね」
「本当の事だし」
「⋯っ、チャラい!」
「さくらにしか言わないし思わないよ」
「⋯~~っ、」
ふわりと微笑んだミナトがわざとなのか、そうでないのかわたしには皆目見当もつかない。
「初っ端からドキドキし過ぎてどうしよう⋯」
「さくらも結構直球だよ?」
「そんな事ないよ!」
こんな会話をしながら、複合施設にある映画館へと向かう。
自然と繋がれた手は、どこまでも温かかった。