そんな事を思っていると「じゃあ次はさくらの番」とミナトが言った。



「わたしの?」

「そ。さくらは将来の夢とかないの?」

「⋯わたしの将来の夢?」

「うん」



そう聞かれて、パッと出てくるものがなかった。

だって、将来は凛也さんと結婚して家庭に入るってそう決まっていたから。

ただ、世間体の為に、少しでも彼に相応しくなれる様に大学は卒業しなくてはってそう思っていたから。

そこに意思もなければ夢も希望もなかったから。



「わたしは─────、」



だから、言葉に詰まってしまった自分が酷く恥ずかしくて。

ミナトはちゃんと将来の夢を持っていたのにわたしには何も無くて、そんな空っぽなわたしがミナトと一緒にいたいと思う事すら引け目を感じてしまって。


一気に負の感情に支配されていく。


わたしの、夢。

決められた未来しかなかったわたしの、夢は───────。




「俺と楽しく過ごす、とか?」

「⋯⋯え?」

「ってごめん。さすがにクサすぎるな」



言葉に詰まってマイナスな方向にばかり沈んでいたわたしを引き上げてくれたのは、他でもないミナトで。


わたしの心中を察してくれたのか、それともただ冗談で言っただけなのかはわからないけれど、一つ言えることはミナトは間違いなくわたしを救ってくれたという事。



「そういう将来の夢でもいいの?」

「むしろダメなの?俺、教師も夢だけどこの先もさくらといっぱい笑って過ごしたいってのも夢だよ」

「本当に?」

「うん。ほんとに」



空っぽだと思った。

目指したい職業もなければ行きたい大学もない。だけど、ミナトと一緒にいたい未来を将来の夢と呼んでいいのなら。わたしには絶対叶えたい将来の夢があると堂々と言うことが出来る。